Natural-テンテン-(テンリー)

 

ー Natural ー

 
「はー、疲れた」
肩をコキコキと鳴らして荷物を背負いなおす。

「テンテン、修行が足りませんよ!」
リーがキラリと歯を光らせて、ビシッとポーズを決める。
疲れてる身体と心には、そのオーラはちょっと痛い。

「さあ、早く行きましょう!ガイ先生がお待ちです!!」
うきうきと軽やかな足取りで歩いていたリーが、でもいきなり立ち止まった。
その背にぶつかりそうになった私。
「ちょっと!リーったら何よ?いきなり止まらないでよ!」

でも、私の抗議の声に対する返事はない。
止まったままのリーの顔を見上げたら、その目はある一点を凝視していた。
その視線の先には、薄暗くなってきた演習場の木陰に寄り添う二つの影。

薄暗闇でもわかる、里で唯一の桃色の髪の持ち主、春野サクラ。
ギョッとして身を乗り出した後に、ハッと気付いてチラリと上を見上げる。

リーは硬直して、ひたすらその影を見つめていた。
・・・あーあ、固まっちゃってる。
リーのそんな顔を見続けることが出来なくて視線を戻す。
・・・当たり前よね、”憧れのサクラさん”のあんな所見ちゃったんだものね。

どうしたものかと迷いつつ、寄り添う影から目を離せずにいたら、
その二つの影は一瞬離れ、そして次の瞬間、激しくぶつかって揺れた。

私達の視線の先で繰り広げられるのは濃厚なキスシーン。
サクラの桃色の髪の毛にかかる純粋な金色の髪。

え?うわ・・・あれ、ナルト!?

サクラの頭を抱えるように、桃色の髪の毛をかき乱しながら
その唇を貪るナルト。そして、それに応えるサクラ。

サクラの後を追いかけるナルトの姿は昔からよく目にしていたが
それはいつも控え目な様子だったから、今のこのナルトにはとても驚いた。

あまりの展開に、固まって動けなくなってしまった私。
その袖を引っ張ったのはリーの指だった。
「行きましょう、テンテン」
ハッとしてリーの顔を見上げる。
リーは真っ直ぐな瞳で私を見ていた。

何も話をすることが出来ないまま歩き続ける。下を向いて・・・。
どう声をかけていいのかわからない。
ショックでなかったはずがない。
だって、ずっと・・・もう4,5年以上もずっと、
”春野サクラ”を目で追っていたリーなのだ。

沈黙を破ったのは、リーが先だった。
「・・・ちょっと、びっくりしましたね」
その静かな声に、ビクッと肩をこわばらせる。
目線は足元に落としたまま。

先を歩いていたリーが立ち止まってこちらを見ている気配がする。
でも私は顔を上げられない。
だって、どんな顔をしていいのかわからない。

「テンテン・・・泣きそうな顔をしてますよ」
それは・・・あんたでしょうよ。
顔を上げてリーを見ることが出来ないまま横に視線を走らせる。
西の空に先程まで残っていた夕焼けの尾はすっかり無くなっていた。

「でも・・・知りませんでした。テンテンがナルトを好きだったなんて・・・」
「え?」
「僕達は揃って失恋ですね」
ハハハ、と笑うリー。

リーの言葉を反芻する。
ちょっと待て。誰がナルトを好きだって・・・?

「ち・・・っ、違うわよ!!
私はっ、・・・あんたがショック受けただろうと思って!」
叫ぶようにそう告げたら、リーは首を傾げた。

「え?僕ですか?僕なら大丈夫ですよ」
「えぇっ?どうしてよ?あんた、だってサクラのこと・・・」

「はい、サクラさんは女神です」
迷うことのないその言葉に、何故か胸がキュンとする。

「だからいいんですよ。サクラさんが幸せならそれで」
切なくなるような純粋な綺麗な笑顔。

何、それ・・・
何カッコつけてるのよ・・・
男の子って何考えてるの!?
好きな子が幸せなら自分も幸せ・・・だなんて

そんなの・・・ありえないっ!!
私は拳を強く、強く握り締めた。

リーはいつだって努力してきた。
忍術を使えない忍なんて・・・。
そう言われ続けて、散々辛酸を舐めさせられて。
どんなにその力を欲したことだろう。
でも、手に入らないからと簡単に諦めたりしなかった。
だから、今のリーがいる。
だから・・・

・・・でも
でも、こればっかりは、私の出る幕じゃない。
唇を噛み締める。

「・・・あんた、欲はないわけ?」
私は泣きたい気持ちを抑え、リーを置き去りにして歩きながら呟いた。

そうしたら、リーの淡白な声が追いかけてきた。
「欲ならありますよ」
あっさりと肯定されたことに少し驚いて足が止まる。

「・・・へえ、そうなんだ」
でも、何でもないような口ぶりで返事をする。
後ろを振り返ることは出来なくて立ち止まったままで。

あれだけのキスシーンを見ても揺らがないんだ。

何で?
どうして?
そんなにサクラがいいの・・・?

「ボクは結婚するなら、絶対テンテンとします!」

突如、高らかにされたその宣言に、私は目をむいた。
「・・・はあ!?」

振り返った私の目に映っていたのは、強く拳を握り
右腕はピンと伸ばした背筋に沿うように真っ直ぐ上げられたリーの姿。

「・・・え、あ、え?

えーーーーー!?」
私の絶叫に、リーは一瞬首を傾げ、それから笑顔を見せた。

「あ、間違えました。テンテンのような人と絶対結婚します!」

瞬間、ガクリと首が落ちる。
その天然なボケが、今の私には物凄く心臓に悪いなんて
あんたはわかってるんだろうか?

私は先程の動揺を突っ込まれまいと、コホンと咳払いをして誤魔化した。
「・・・私”のような人”って、具体的にはどういう人なのよ?」
「そうですね・・・」
リーが、顎に手をやって、うーんと唸る。

ちょっとドキドキする。
可愛い、とか言われたらどうしよう。
料理が上手とか、よく気がつくからとか
実は前から好きだったとか・・・

「だって、テンテンは僕の一番の理解者です!」
「・・・は?」
「テンテンは僕がどんなでも側にいてくれます。
相談したい時にはいつでも話を聞いてくれますし
僕が困った時にはいつでも駆けつけて助けてくれます」

ちょっと待て。
その台詞、何となく感動的な内容にも聞こえるけど、
結局、私って単なる便利屋ってことじゃない?

まるでこれは・・・
そう、所謂、ツゴーの良い女ってヤツ?

「あのねー・・・」
私は目を伏せて、怒りを抑えた。
言ってやろう。そうよ、これは言ってやらねば。
でないと、私の気が済まない。

「私のような人っていうのが、あんたの理解者って意味なら
最初っから私と結婚するのが一番なんじゃないの?」
わずか声が震える。

どうよ?
少しくらいトキメけ!
動揺しなさいよ!!

少し空いた間。
ゴクリと息を呑む。
沈黙が怖い。何か言ってよ。

その時、リーが、ポン!と手を打った。
「おーーーーーー!!
そうですね!おっしゃる通りです、テンテン!」
それは、あまりにあっけらかんとした顔。態度。

正直げんなりとする。
何なのよ、本当にこれは天然なの?
それとも、私、うまくかわされているだけ?

私はもうそれ以上は何も言う気にならず
「早く先生の所に行くわよ」
そう言って歩き出した。
リーが小走りで追いかけてきて横に並ぶ。
チラリと、バレないように横に視線を送ると、リーはニコニコして
鼻歌なぞを口ずさんでいた。

ナルトだって、いつもはこんなマヌケな顔してるくせに。
なのに、さっきは全然違った。

・・・じゃあ、リーは?
リーも男の顔になるわけ?

私は横を歩く、リーのベストをチラリと視界に入れる。
真っ直ぐ前を見つめる自信に満ちた横顔。

いいわよ、こっちを向かせてやろうじゃないの。
私はリーのベストの端を掴むと思いっきり引っ張った。
「え!?」
リーのどんぐり眼と長い下睫毛が眼前に迫って、
そして、私はゆっくりと目を閉じた。

 

ー 終 ー

 

ひとこと

昨日がテンテン誕生日でした!
毎度のことながら時間が過ぎてしまったよぅ。でも、気持ちだけ贈らせていただきます!テンリーメインの、ラブx2ナルサクおまけで。でも、誕生日ネタが何も入っていない~(><)
こんな所に書くな、ですが、こっそりと、敬愛するアキ様へ捧げます。 (2012.03.10)

 

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