-シアワセ-

 

「・・・そりゃあ、いつかオレを選んでもらえたら嬉しいけど。でも、ま、いいんだ。サクラちゃんがシアワセでいてくれりゃ、それでいいんだってばよ」

 

-シアワセ-

 

そう、彼女が幸せであれば、オレは・・・
彼女の笑顔を見ることが出来れば、オレは・・・。

なのに
オレが見る彼女は怒った顔ばかり。

「ナルトのバカ!!」
「・・・は?」
「あんた、何も見てないじゃない」
「サクラちゃん?」
「私のこと何もわかってないじゃない!」
「え?」
「私が幸せだなって思う時がどんな時か、あんた全然わかってないじゃない!!」

幸せって・・・
なんなのさ

「私は・・・」
サクラちゃんは、言いかけて、でも口を固く結んでオレを睨んだ。
「私の幸せがあんたにわかるって言うなら教えてちょうだい。
そして、わからないなら、わかるまでの間、私に話しかけないでちょうだい!
絶交よ!!」

・・・なんかわからない内に絶交宣言されてしまった。
オレはただ、『サクラちゃんがシアワセならいいな』って言っただけなのに。

 

「サクラの幸せ?」
サイが物凄く不審な顔でオレを見る。

「あ、えと、幸せというか笑顔というか・・・」
「何それ」
「いーから!お前の知ってる限りでいいから!!」
「いのといる時」
「え?」
「あと、甘いものを食べてる時」
「は?」
「サクラが笑顔の時でしょ」
「・・・はぁ」
「何、不満?」
「いや、いい。サンキュー」
オレは諦めて踵を返す。
そうだよな、サイなんかにわかるわけないよな。オレにわからないんだからさー。

その時、サイがボソリと呟く。
「あ、もう一つあるけど」
「え?何なに?」
「・・・言わない」
「サイ~~~」
「絶交された理由考えた?ナルト」
絶交された理由?そんなのわかるわけない。

 

「サクラの幸せ?」
「そうそう、今、サクラちゃんに絶交宣言されちまったんだよ。いのならわかるだろ?教えてくれよ」
「何それ」
・・・なんで、サイと同じ反応なんだよ・・・
そう思いつつ、作り笑いを絶やさない努力をする。
「サクラちゃんがシアワセだなーって思う時がわかるまで、オレってばサクラちゃんに話しかけられないんだよ」
いのは呆れた顔でオレを見上げる。
「どうしてそんな流れになったのよ?」
「あ?えーと、サスケが戻ってきて良かったな、って話からサクラちゃんがシアワセなら・・・って」
「ふーん・・・」
「なぁ、サクラちゃんって、サスケ見てシアワセそうな顔してるよな?」

最近、よくわからなくなった。
「よな?って何よ。私にはわからないわよ。ただ・・・」
「ただ?」
「この間、あんたとサスケ君とサクラと三人でいたのを見たわ。その時は笑ってたわね」
「じゃあ、三人でいるのがシアワセってこと?」
「あんた・・・その時どこを見てたワケ?」
え?オレ?・・・どこ見てたんだっけ?
オレは一生懸命記憶を辿る。
・・・オレってばもしかして、サクラちゃんの言うとおり、サクラちゃんのこと、ちゃんと見ていないんじゃないだろうか。

 

「サクラの幸せそうな顔?」
カカシ先生なら見てないようで見てるから・・・悔しいけど、サクラちゃんのことよくわかってるから答えを知ってるかもしれない。
「ああ、見るよ」
あっさりと答える姿に、オレは一瞬こっそりと嫉妬する。
「・・・どんな時?」
口をへの字に結んで聞くオレを、カカシ先生は少し意味ありげに見つめた。
「うーん・・・どうしようかな」
「はぁ?何もったいぶってるんだってばよ」
イライラと訊ねると、先生はチョイチョイと指でオレを呼ぶ。
何事かと近づいて耳を寄せたら、カカシ先生はニマッと笑って耳打ちしてきた。

「ナルトを見てる時」
「え?」
「だーかーら、頑張ってるお前を見てる時」
「・・・え?」
「お前が真剣な顔をして、どこかを見てる時、サクラはそんなお前を見て笑ってるよ。とても嬉しそうに。優しそうにね」

あれは・・・ちょっと、いい顔だよね・・・。
と、カカシ先生は思わせぶりな言葉を口にする。

「オレ・・・知らない。見たことないってばよ」
「それは当たり前でしょ」
「え?」
「だって、お前はその時いつも遠くを見てるんだから」
「?」
「『火影になる!』とか『オレは諦めねぇ!』とかお前が大見得切ってる時だって言ってんの。遠くの目標を見据えるお前を、サクラは見て笑ってる。サクラはお前の一番の応援団だろうね」

オレ、知らない。
だって、オレが見てるサクラちゃんは、いつも怒って泣いて・・・

・・・でも
オレは拳を握って目を上げた。
火影岩が見える。

「先生、サンキュー」
オレは礼を言って走り出した。
サクラちゃんを探す為に。

 

サクラちゃんは病院からの帰り道だった。
「サクラちゃん!」

呼び止めるオレに、サクラちゃんは足を止める。
「ナルト・・・」
少し戸惑ったような顔。

そこで、はっと気付く。
あ、ヤベ・・・。話しかけちゃいけないんだった。
でも、サクラちゃんは黙ったままオレを見つめている。
何か言わなくちゃ。

「えっと・・・あの・・・」
「・・・何よ」
う・・・、やっぱりまだ怒ってる・・・よな。
「いや、あのさ、宣言しようと思って」
「は?」
「オレは・・・火影になる!」
そう、頑張れ、オレ。
「・・・はぁ?何言ってるのよ、急に」
サクラちゃんは呆れ顔だ。
ああ・・・ダメか。確かに唐突で、おまけに棒読みだし。
オレは頭を抱えつつ、成り行きを見守った。

火影になる宣言をしたオレは、くるりと後ろを向いて火影岩に向かってガッツポーズをする。
「急にだって何だっていいんだってばよ!オレは何度でも言いたいんだ!!」
あーあ、変なポーズ取ってるってばよ。
オレってば、カッコワリー・・・。
思わず涙目になってしまうオレ。

サクラちゃんは、そんなオレに向かってゆっくり歩き出すと
「その前に早く中忍になりなさいよ」
そう言うと、手に持った書類で軽くポンとオレの背中を叩いた。

でもその時、サクラちゃんの口元が緩んだ。
そして目が優しく細められる。
じっとオレの横顔を見つめたまま・・・

あ、この横顔
オレを見ている、この横顔
サスケを見ていた、あの日のサクラちゃんと同じ・・・

ずっと以前、自分で口にした台詞が頭の中をよぎる。

『いつかオレを選んで貰えたら・・・』

『サクラちゃんがシアワセでいてくれたら・・・』

オレは思わず、隠れていた木立から飛び出していた。そしてサクラちゃんの腕を掴む。
「え・・・?」
「サクラちゃん!」
「え?ナルト?え?あれ?」
サクラちゃんは火影岩を眺めたままのオレと、今出て来て腕を掴んだオレを見比べてびっくりしている。
オレは構わずに続けた。
「サクラちゃん、今、もしかして・・・シアワセ?」
「なっ・・・!?」
「さっき、オレを見て笑ってた。すげーいい顔で笑ってた」
「~~~~~!!」
サクラちゃんは真っ赤な顔になって俯く。

火影岩を眺めていた、影分身のオレが振り返ってニッと笑うと、軽い音と共に消えた。
「サクラちゃん、笑って」
「え?」
「笑って」
笑顔が見たい。
サクラちゃんは真っ赤な顔のまま、横を向く。

「・・・無理」
「どーしてっ?」

真っ赤になって横を向こうとするサクラちゃんの目線に無理矢理入り込んで訊ねるオレ。
サクラちゃんは持ってた書類を振り下ろし、その勢いでオレの腕を外すと叫んだ。
「バカナルトっ!恥ずかしいからに決まってるでしょ!!」

その瞬間、サクラちゃんの真っ赤な顔がオレに伝染する。
オレは思わず口元を手で覆って横を向いた。

うわ・・・ダメだ。熱い。顔が熱い。
どーしよ。
一人パニックになるオレ。

その時、背中に温かいものが触れる。
「帰ろ」
サクラちゃんが少し頬を染めたまま、オレを見上げて口角を上げる。

あ、そうだ。これだ。
オレがいつも真っ直ぐ前を見つめていられた理由。

サクラちゃんが背中を押してくれていた。
一緒に歩いていてくれていた。

オレは、ほっと一つ息を吐いて、それからニッと笑う。
「ん、帰ろ」

改めて火影岩を眺める。

歴代の火影の中でも、幼い日からずっと憧れて眺め続けてきた一人の火影。
四代目火影。

彼に向かって、心の中で親指を上げる。
オレ・・・シアワセだよ。

オレを守ってくれて、里を守ってくれてありがとう。
な、父ちゃん。

 

ー 終 ー

 

ひとこと

アニナル万歳!!シズカの「思いを伝えるおつもりですか?」からの一連の問答に、黙って微笑むナルトのカッコよかったこと!!オトコだ~!!(><)ドストレートなナル>>>サクに感動して悶え死にました。ナルトがサクラちゃんを好きになった所(”認められたい”)とか、ちゃんと丁寧になぞってくれている~。嘘告の後にナルサクは止めてくれっていう意見を見たりするけど、あの事件があるゆえにサクラは進めると思うのですが・・・。そして嘘告くらいで揺らぐナルトじゃない・・・と言ってくれるアニナルスタッフの皆様に本当に感謝、感謝です。そういえば先週のアニメも、木の葉丸の軽々しい発言に、サクラちゃんが「死」に関する発言をして怒った瞬間、ナルトのサスケへの「一緒に死んでやるよ」発言に苦しむサクラちゃんを妄想した私でした。(深読みし過ぎ?)でも、とにかく、アニメスタッフさん、ありがとうございます。うん、原作も信じよう。サクラちゃんの活躍はこれからだわ。
そして、自来也様カッコイイよ(><)私、小説はまだ書いてませんが、ジラツナなんです。いつか書きたいと、書きかけのを暖めている所。自来也様生還説を信じて待っているんですがダメですかね?実は、別の小説を書きかけていたんですが
アニナル見てすっかり熱が・・・。一人でニヤニヤして何十回もリピートしちゃいましたよ。(2011.11.04)

24 人の方が「読んだよ!」してくれました。