-ぎこちなくも・・・-(ナルサク)

 

「何、そのぎこちない歩き方」
「え?」

ナルトと二人、並んで歩く。それはいつもの光景。
でもいつもと違うのは、ナルトの腕が私の肩にかかっていること。

で、何がぎこちないかって、その歩き方。
まるで手を横に伸ばしたロボットが、ギッチョンギッチョン歩いているみたいで、何かイヤ。
怪我をしたナルトを私が介抱して歩いている、って状況の方が数百倍自然だろう。

「いや、何て言うか……」
「何て言うか?」
繰り返した言葉に答えは返って来ず、

「……何でもねーってばよ」
ニシシと口が横に大きく開かれて歯が見える。照れくさそうな嬉しそうな笑顔。
それ、こっちまで照れるからやめて。

あーあ。
やっぱり、普通の恋人みたいには、どうやったってならないわよね。

 

-ぎこちなくも・・・-

 

いつの間にか好きになっていた人。
ナルト……

いつからナルトが好きなのかって聞かれると困る
どこが好きなのかって聞かれても困る

いつの間にか、まるで私の身体の一部のように自然な存在になっていたのだから。

「サークラちゃん」
ナルトの明るい笑顔が好き。不安を吹き飛ばしてくれるような自信たっぷりの笑顔。

「サクラちゃん」
ふと見せる真剣な顔も好き。ううん、最近はドキッとするから、ちょっと困る。

……ん?
突然、自分の視界が暗くなる。圧迫感を感じる。
ちょっと……近すぎじゃない?

パッと顔を上げた、その目の前には、ナルトの蒼い瞳。
どきん、と心臓が飛び出しそうになって、瞬時に俯く。

「サクラちゃん……」
耳元で囁かれる低い声。
俯いた私の眼前にナルトの指が近付いて、そしてゆっくりと顎に触れる。
強くはないけれども、抵抗を許さない力がかかり、私の顎が持ち上げられる。
そして、再び、目の前にはナルトの蒼い瞳。

ちょっと……これは……いかにも近過ぎよ!
「……だ」

「だめええええ!!」
自分の叫び声で目覚める。
荒い息で握り締めていたのは薄いかけ布団。そこは自分のベッドの上だった。

「え、……夢?」
ホッとすると同時に冷や汗が出る。

ど……
どうしよう。

だって、今日は久々に第七班での任務だと聞いているのに。
本当に久々だから、私も凄く楽しみにしていたのに。
なのに、私、どうやってナルトと顔を合わせればいいのよ?

 

いつもと同じように待ち合わせ時間に行く。
サスケ君はまだ来ていない。
ああ、やっぱりもう少し遅く来るんだった。

でも、ナルトはいつも時間ギリギリくらいだから
来る前にちゃんと気持ちを切り替えておかなきゃ。

と思った、その時
「サクラちゃん」
突然背後から聞こえた声、そして、肩に触れる手の感触。
「きゃあ!」
思わず悲鳴を上げて、文字通り飛び跳ねた私。
ナルトの手が宙に彷徨う。

「おはよ。……って、どったの?サクラちゃん」
「な、何でもないわよ」
何で、今日に限ってこんなに早いのよっ!

「オレ、今日は久々の七班の任務だから嬉しくってさ」
「……そうね」
ボソッと言葉少なに答えてしまう。
ああ、もう。私だって楽しみにしていたのに。

「サクラちゃん、何か嫌なことでもあった?」
少し遠慮がちなナルトの声に、さすがに悪いなぁ、と思う。
「ちょっと、夢見が悪くてね」
「へー、どんな?」
軽く聞いてみただけであろう台詞。
でも、その、のん気な空気に、勝手だと自覚しながらも軽く怒りを覚える。

「どんなって……。あんたが悪いのよ」
「え?オレ?えっ、オレ、サクラちゃんの夢に出て来たの?」
にこにこと嬉しそうな顔になるナルト。

「そうよ!あんたったら……」
言いかけて、今朝の夢の中のナルトを思い出す。

『サクラちゃん……』
伸びる手が私の顎を持ち上げて……

うわ、ぁ……

「え?何、サクラちゃん、赤くなって。熱でもある?」
「な、な、な……ないっ!」
なのに、ナルトの手がおでこに伸びる。
「ちょっと!すげー熱いよ、風邪ひいた?」
「いいから触るな!

……しゃーんなろ!!」
軽くぶっ飛ばして、それから待ち合わせ場所の欄干に腕を乗せる。
ちょうどそこに、サスケ君が現れて、私は何とか笑顔を引き出して「おはよう」と挨拶した。

ああ、どうしよう。これは心臓に悪い。
いや、これは意識するから悪いのよ、そう、意識しなければいいんだわ。
今日の私は大人しく、ひたすら大人しく、サスケ君とナルトの陰にいよう。

 

「え?ナルトと二人ですか?」
「そう、サスケには幻術がらみの任務をやってもらおうと思ってね」
「やった、ラッキー!」
呟くナルトに、やばい!と背中が汗をかく。

「げ……幻術なら私もっ!いえ、私がそちらをやりますっ!」

「んー?でもサクラ、今回のは……」
言いかけるカカシ先生の言葉をもぎ取る。
「私、幻術の任務につきたいと思っていたんです!!」

珍しくサスケ君が声を出す。
「おい、今回のはやめておけ」
「大丈夫よ!私、幻術の修行の成果を確かめたくて!」
「だが、お前にはかなりきついと……」
「大丈夫だったら!任せておいて」

サスケ君をはったと見据えて
お願いだから、今ナルトと二人にしないで!と念を送る。
サスケ君はわかったんだか、わからないんだか、とにかく黙った。

「サクラちゃん?」
後ろでナルトがすごく戸惑った顔をしていたけれど、
私は背中で「ごめん」と謝って、そして任務の場所に向かった。

 

……が
私はそこで、カカシ先生とサスケ君が止めてくれた理由を知り、そして激しく後悔することになる。

「いやあああ、何これ!!」
右も左も上も下も虫だらけ。
「幻術じゃないじゃない!一体この任務のどこが幻術なのよ!」
虫も幻術なら仕方ないと思うけれど、本物だったら嫌だああああ!

今回、一緒の任務についたのはシカマルとシノだった。
「なーんで、お前が来るんだよ、サスケのはずだろ?」
「だって、幻術だって聞いたから」
「そうだ。幻術がらみの任務だが、本物の虫を用いる。
なぜならば、この虫は敵に幻術をかけて逃走する習性がある。
この虫の尻に溜められた幻術効用のあるエキスを抽出するのが今回の我らの任務だ。
よって、幻術に対して強い耐性のある者しか作業が出来ないことになる。
また今回は念のため、くのいちは起用しない、と指示書にはあったが?」

「エキスって……抽出って……」
思わず涙目になってしまう。なんなのよ、この部屋。
大体、虫の大きさが尋常じゃないじゃない。……あー、もう気分悪くなってきた。

「メンドくせーなぁ。おい、今からでもサスケと替わってこい。
いちいちギャーギャー悲鳴上げられたんじゃ集中できねーよ」

「そ、それは……出来ないわ!」
「何だよ、ナルトとケンカでもしたか?任務に影響させんな」

「……してないけど」
「そうだ、してないはずだ。なぜならば、ナルトは今朝上機嫌だった。
サクラと一緒の任務だと話し、今日こそ……と決意を固めていた」
「今日こそ?何?何の話よ?」
「それは言わなかった。だが、その動きから予測する限りでは、何やら良からぬ想像をしているようだった」
あいつめ~~~
拳をぎゅっと握り締める。

「……へえ、お前ら、そういう関係になったんだ」
シカマルが驚いた顔を見せる。
「ま、良かったんじゃねーか?」
「そうだな。そういうことなら、尚更サスケと替わってくるといい」
シノのその台詞に、シカマルがあちゃーと額に手を当てる。
シノ!あんた、それ一体どういう意味よ!!良からぬことをして来いとでも言うわけっ!?
「私は……絶対、ぜーったい!替わらないわよ!!」
思い切り叫んだ、その私の叫び声に、虫が驚いたかボトボト天井から降ってくる。
そして更に私の悲鳴が大きくなった。

 

日が暮れた。

「ああ……疲れた」
ガックリとやつれて火影室に向かう私。
「なーにが、疲れた、だ。お前は叫び疲れただけだろうが」
シカマルが報告書を手に私を冷たく睨む。

「それに、どうせ綱手様の所に行くんなら、せめてこの報告書持って行ってくれればいいのによ」
「やだ、それ虫の液やら何やら、色々、色々付いてるんだものっ!」

はー、とシカマルがため息をつく。
「……お前、虫って言ったって、粉末になった虫の薬だったら平気で触ってるじゃねーか」
「生身の虫を想像出来なきゃいいのよ、そういうものだと思えば薬だと思えば平気よ!
でも、生身のゴソゴソしてるの見ちゃったら、そうはいかないわよ!!」

「お前、本当に面倒な女だな。だからサスケと替われって言ったのによ」
その台詞は綺麗に知らん振りしてやる。

その時
「サクラちゃーん」
後ろから呼びかける声に、ギクッ!背が伸びる。
「ほら、カレシが来たぜ」
「シカマル!」
咎めの言葉を口にするも、シカマルはニヤッと笑うのみ。

「よ!シカマル。あれ?サクラちゃんと一緒の任務だったの?幻術の?」
「……まあな」
「ふーん。……なんか大分疲れてるみたいだけど」
「ああ、色々な」
鼻で笑って、こちらをチラリと見たシカマルを私は思い切り睨みつける。

「じゃ、オレは報告書出してくるから」
「あー、はいはい、よろしくー」
綱手様に頼まれてた書類だけ出したら、早くお風呂入って着替えてサッパリ忘れてしまいたい。

そう思って歩き出した私を、シカマルがふと呼び止めた。
「ああ、サクラ」
「何よ?」
こそっと耳打ちしてくる。
その内容に思わず絶句する。それから慌てて
「ばっ……バカじゃないの!?」
拳を振り上げるも、シカマルは楽しそうに忍び笑いをしてサッと火影室に入っていってしまった。

「……何、今の」
ナルトが火影室を指差しながらこちらを見る。
「何でもないわよ」
「でも……」
「何でもないったら!」

つい強く言ってしまって、慌ててナルトの方を振り返ったら、ナルトの口がひん曲がっていた。
「サクラちゃん、オレのこと避けてる」
「……え」
「今朝から急にオレのこと避けてる」

だって……
言えないわよ。
夢の中のあんたにキスされそうになって、
それ以来恥ずかしくてあんたの顔を見られなくなっちゃったなんて

おまけに……
シカマルめ~~~
先ほどのシカマルの台詞を思い出して、拳を固く固く握り締める。

でも、ナルトの口はこれ以上ないってくらいひん曲がり、
このまま放っておいたら、なんか物凄く面倒くさいことになりそう。

ああ……もう!

私はナルトのジャンバーを右手で掴んで思いっきり引っ張った。
「え?」
左手でナルトの頬から耳にかけて頬骨のラインに手を添える。
「!」
唇に柔らかな感触が宿る。

一瞬の静寂。

ゴクッとナルトの喉が鳴った気配がして可笑しくなる。

 

そうよ、私からしちゃえば良かったのよ。
いつもと違うナルトに、それも夢の中なんかのにドキドキして私らしくなくなるなんてバカみたい。

ナルトがびっくりしている顔が浮かぶ。
私は目を閉じてしまっているから見えないけれど、
ナルトは目を閉じる間もなかったかもね。

『さっきの虫の幻術は、人間にとっては色香に似た効果があるんだと。ナルトに試してみな』

きっと、虫のエキスを抽出する時にくっついてしまった染みやら何やら
私の服にはたっぷり付いてしまっているんだろうな、そう思いながら握っていたナルトの上着を離す。

ナルトの腕が動く気配がした。

……ああ、もう、知らないから。

 

ー 終 ー

 

ひとこと

ぎこちなくもラブラブ。
>もち子様~。
ステキな命題をありがとうございました!ご期待いただいていたものとちょっと違ったかもしれませんがごめんなさい。いただいた”ぎこちない”って言葉に萌えさせていただきました。まず、ぎこちないナルト君を、それからサクラちゃんを書いてみました。本誌では最近ご無沙汰の、ドタバタ系任務にしたくて虫さんネタに。となると、シノ君は必須で、それから幻術耐性あったシカマル君も。にしてもサスケが影薄いなぁ・・・。(何故サスケだけ敬称なし?(^^;)ちょっと、自分的にいつもと違う感じのノリだったので、楽しくもあり難しくもあり、でした。(2012.01.13)

 

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