風景(ナルサク)

 

 

「サクラちゃん、今度の休みいつ?」
「え?」
「ちょっとつき合って欲しい所があるんだってばよ」
「えー……」
「あ、ヘンな意味じゃなくてさ、人助けっつーか」
「人助け?」

 

ー 風景 ー

 

 

50メートル程の高い岸壁の中程、少し窪んだ岩の上に私たちはいた。
「で、私がここを破壊すればいいのね?」
「そうそう」
「別にいいけど」
そう言って、私は手にチャクラを集中させる。
そのまま真っすぐ岸壁に向かって手刀を突き刺した。
縦に細く岩肌に亀裂が入る。でも、壁自体は崩れ落ちない。
「こんなもんでいいの?」
「ああ、上出来だってばよ」
ナルトは岩肌に耳を当てたまま答えた。
「一体、何をしようってのよ?」
そう言いかけた時、ゴゴゴゴゴ……という地鳴りと共に今壊した亀裂から大量の水が噴き出してきた。
「きゃ……!」
大量の水に押し飛ばされ、体勢が取れない。
でも、気付いたらナルトに抱えられていた。

ナルトはトントンと身軽に岩壁を伝い降り、下の平原へ。
「おー、思ったより水の勢いが強いなぁ」
のんびりと口を開くナルトの頭を私はポコンと叩いた。
「アンタねぇ、水が出るならそうと言いなさいよ」
「はは、悪い。いやー、螺旋丸で壊そうと思ったんだけど、あれってば力の加減が出来なくてさ。指一本くらいでプチッと壊してくれそうな人っつったら……」
「どうせ私は怪力ですよ」
言って、ナルトの腕から下に降りる。
ナルトはアハハと笑って腕を上にあげた。
「いやいや、ホント助かったってばよ」
「このくらい別にいいですけど」
「だって任務にしちまうと高くつくじゃん?」
「まぁね」

気付けば、下の平野にはたくさんの子供達がいて、流れ落ちる水に向かって歓声を上げていた。
溜まった水で出来た池に飛び込んでいる子もいる。
よく見れば、川の筋のようなものもあった。

「ここさ、元々一年くらい前までかな、溜め池だったんだって」
「へえ」
「でも、工事したら水脈が変わっちまってさ」
それから、ナルトはこのため池が子供達の遊び場だったこと、その子供達から話を聞いて何とかしたいと思ったことなどを話した。
子供達の為に休日返上で無料奉仕とは相変わらずお人好しだ。
それにつき合ってる私も十分お人好しなんだろうけど。

ナルトは少し小高い丘に腰を下ろして、眼下の水辺を嬉しそうに見下ろした。
「水の音って落ち着くよなぁ」
「そうね」
しばし沈黙が続く。
でも噴き出る水の音がして、子供達の歓声がして、鳥の鳴き声がして。
何も話さなくても、特に気にならない。

目を上げる。
空が高い。
薄く、刷毛でこすったような薄い雲が遠く散らばっていた。

雲になりたいとボヤくシカマルを、いのとよく笑い合った。
「何言ってんのかしらね」って。
でも少し時間が経って、何となくわかるようになった。
雲になったら私たちなんて小さい小さい豆粒のようなもの。
人間が笑って、怒って、悲しんで、苦しんでいる姿なんて、さぞかし滑稽に見えることだろう。

雲はふわふわと浮かぶばかりで自分では何もしない。
風に吹かれて千切れたりくっついたり。
時には太陽の光を独り占めして、夜には星をいっぱいに抱いて。
ただひたすら素直に風に流されながら生きて行く。
でも、どうせ私たちも流されながら生きているのだ。
どれだけ苦しんで決断を下しても、また未来の私たちは過ちを犯し、戦いは続いていく。
じゃあ、苦しむだけ損なんだろうか……?

思考が深く深く奥に入り込んでいたことに気付いて、私はハッと目を戻した。
やだ、疲れてるのかもしれない。
きっと屋内での作業ばかりが続いていたせいだ。
忙しさにかまけて考えないようにしていた色々なことが、心の奥の方から次々と沸き上がってくるような感覚。
でも、それはそんなに嫌な感覚ではなかった。

誰かが言っていた。
答えが出ても出なくても常に考え続けなさい、と。
自分に質問を投げかければ、頭は懸命に答えを見つけようとフル回転で動き出す。
その場では答えに辿り着かなかったとしても、しばらくしてふと気付くと答えがそこにある。
それが「進化」であり「進歩」なのだ、と。

でも、だからって今日ここで考えに耽りながら過ごすというわけにもいかないだろう。
ナルトとこの後を約束したわけでもない。
帰れと言われることはないだろうが、私の出番は終わったのだし、サラッと帰るのが自然なんじゃないだろうか。

「じゃあ、私はこの辺で……」
ボソボソと口を開いて振り返ってみて気付く。
ナルトは草の上に寝転がって、すっかり寝入っているようだった。
そう言えば、今日ここに来る途中で昨晩の任務について話していたっけ。
「徹夜明けで子供からの依頼に応えるなんてねぇ」
ホント、馬鹿みたいにお人好しだ。

「別に……いいけど」
ぼそりと呟く。
文句ありげな色を少し漂わせて。
でも、これで悠然とここで考えに没頭することが出来る。
もしナルトが起きて何か言ってきたとしても
「アンタが寝たから帰れなかったじゃない!」
と言ってやればいいのだ。

その時、ツンツンと後ろから肩をつつくものがあった。
振り返れば、数人の子供達だった。
下で遊んでいたはずなのに飽きたのだろうか?
それともお礼でも言いに来たのだろうか?

「なぁなぁ、お姉ちゃんってナルト兄ちゃんの彼女?」
「は?」
私は引き攣る。近頃の子供ってマセてるのだろうか。
「そうに決まってんじゃん!」
「うん、任務が休みの日に会うって言ったらデートに決まってるよな!」
「さっきだってお姫様だっこしてたわ!」

私は子供達の顔を順繰りに見つめた。
期待に満ちた眼差しが私を見返す。
そうね、このくらいの年頃ってそういうことに憧れがあったかも。

でも私はアンタ達の遊び場作りに駆り出されただけなんですけど。
お姫様だっこって言ったって、ただ体勢が崩れたのを助けてくれただけ。
私たちの間は昔も今も何も変わりがない。
でも、私は小さく呟いた。
「……別にいいけど」
盛り上がっている子供達の夢を壊すまでもないだろう。

子供のうちの一人が、二カッと大きな口を開けて話しかけてきた。
「なぁなぁ、魚釣りやらない?」
「え?」
「姉ちゃんのおかげで魚が入ってきたからさ、一回やらせてやるよ」
「ああ……うん」
ゆっくりと過ごそうと思ったのにそうもいかないようだ。
でも、子供達の元気なパワーを貰うのもたまにはいいかもしれない。

……が、
「はい、針にこれつけて」
と言って差し出された容器の中には、ぐにゃぐにゃとうごめく細い身体のもの。
「な、何よそれ、ミミズ?やだ、気持ち悪い!」
「なんだよ。自分で付けらんないのかよ!」
「冗談じゃないわよ!ぐにゃぐにゃして気色悪いじゃないの!」
凝視しないようにしていたら、先ほどの少年が容器の中から一匹のその軟体生物を手に取ると岩の上に置いた。
「ちぇっ、仕方ねーな。こうやってやるんだよ」
言って、おもむろに側に落ちていた小石でその身体を切り刻み始める。
私は悲鳴を上げる。
「あ、あんた、何てことを……!」
生きてるものを切り刻むなんて……なんて……。
のけぞる私に、でも少年はしれっと答えた。
「だって餌だもん」
そして、少年は斬られて尚クネクネと動くソレを釣り針にひっかけた。

「よし、これでいい!じゃあ、投げ入れて」
「え?」
「ほら、こうやるんだ!」
言って、少年は釣り竿をぽちゃんと池に放り込む。
その後、はい、と釣り竿を渡されて私は少年を見下ろした。
「……で?」
「で?って何だよ。そのまま魚が餌に食い付くまで待つんだよ」
「ああ、そう」
返事をして私は池の中に落ちた釣り糸を見る。水面に何やらプカプカと浮いてるもの。あれはウキというものだろうか。
確か、あれが動いたら魚がかかったって証拠だったわよね。

が、しばらく経っても何も起きない。
私は少年に文句を言った。
「ちょっと!全く動かないじゃない」
そうしたら、少年は呆れかえったような顔で私を見上げた。
「釣りはじっと待つもんなんだよ」
ひどく馬鹿にした顔。
あ、この顔覚えがある。
私は少年から目を逸らした。
下忍の頃のサスケくんだ。
確かに、あの頃の私は馬鹿だったと思いますけれど……。
今も馬鹿だと思いますけど。
でも……
「そこまで馬鹿にしなくてもいいじゃない」
そうボヤいてしまってからハッとする。
拗ねたような声を出してしまった。
やだ、私ったら大人げない。

どう自分をフォローしたものか慌てて少年を見つめたら、少年は驚いたような顔をしてこちらを見た後、少し困ったような表情ながら笑顔を見せた。
「まぁ、姉ちゃんは釣りが初めてなんだもんな。じゃあ仕方ねーよな」
私は更に落ち込む。
どっちが大人なんだかわからない。

そして困ったことに少年のさっきの困ったような笑顔、あれにも覚えがあった。
ナルトだ。
私が失敗をした時、落ち込んでいる時、いつも見せるのは困ったような笑顔。

「……アンタ、いい男になるわよ」
「え?」
少年が首を傾げながら、私を見上げた。
私は真っすぐ前を見つめながら笑って見せた。
「うん、アンタはいい男になる。私が保証するわ」
そう言った瞬間、ピクンとウキが沈んだ。

「今、動いた?動いたよね?」
叫ぶ私に、少年も慌てて池に目をやる。
「ウキが沈んだのか?」
「そうよ!」
直後、竿に伝わってくる何かの振動。
「き……き、来た!なんかいる!!」
私は足を踏ん張り、目を瞑ると、思いっきり竿を上に引っ張り上げた。
「あ、まだ引っ張ったらダメだってばよ」
後ろからの声に目を開けて振り返れば、寝ていたはずのナルトが起き上がっていた。
「え?」
その瞬間、竿を引っ張っていた何かの力が急になくなった。
「きゃ……!」
そのまま、私はバランスを崩して後ろへ。
ドスン。
「いて……っ」
ナルトの上に乗っかっていた。
「あ、ごめん」
と謝りかけたところに重なる声。
「お、重……」
途端に私の形相が変わる。
「何ですって?!」
失言に気付いたらしいナルトが、慌てて首を振る。
「い、いや、何も……」
「女の子に重いなんて失礼にも程があるわ!!アンタがそんな所に寝てるから悪いんでしょ!!」
バチーン!!
ナルトが空を飛んでいった。

 

少年が座り込んで釣り竿を修理している。
どうも、先ほどの魚は針と餌と一緒に糸を引きちぎって逃げたらしい。
「えーと……よくわからないけど、ごめん」
謝ってみるが、少年は振り返らずに淡々と糸に針を繋げて作業を続けていく。
「いいって。よくあることだからさ」
本当に、どっちが大人だかわからないわ。
しばらくして、少年はニカッと笑ってこちらを振り返った。
「ほら、出来たぞ。次は急に引っ張るなよ。釣りは一回緩めるのも大事なんだ」
「え、そうなの?」
「そうそう、少しだけ緩めて魚を泳がせつつ、針をもっとしっかり魚に飲み込ませて逃がさないようにするんだよな」
ナルトも楽しそうに言葉を継ぐ。
「で、徐々に徐々にこっちの方に寄せてきて、相手の体力が尽きて諦めるのを待って、こう釣り上げる!」
「……へえ」
「あの、魚に勝ったぞ!って瞬間が、すっげーいいんだよな!!」
二人は顔を見合わせてすごく楽しそうに笑い合っている。
よくわからないけれど、男の子というものは釣りが好きらしい。
狩猟民族としての名残なのだろうか。
「俺の父ちゃんが言ってた。彼女を釣り上げるのもおんなじだって!」
興奮して屈託なく声を上げた少年の、その台詞の内容に私は目を瞬かせる。
「……は?」
「餌をやって、しばらくじっと待って。たまーに引っ張ってみたり、それから忘れたように自由にさせてみたり。で、相手が焦れた頃に最後にえいや!って釣り上げるんだって!」
「お、おいおい……」
頬を引き攣らせる私に気付いたらしいナルトが少年を止めようと手をパタパタ振るが、少年は止まらない。
そしてとどめの一発。
「ナルト兄ちゃんも、そうやって姉ちゃんを釣ったのか?」
その後の惨事については語るまでもないでしょう。

 

「さ、次こそ大物を釣り上げるわよ」
私はパンパンと手を叩いて釣り竿を手に取った。

「姉ちゃん、ミミズは?」
少し遠慮がちな少年の言葉に、私は口をひん曲げたまま、ずいと釣り竿を突き出した。
「さっさと付けてちょうだい」
当然の権利とばかりに命令する。
「はい」
素直に返事をして男子二人が準備にかかった。
フン、冗談じゃないわ。女の子を魚扱いするなんて。

餌をつけられた釣り針を手に私は池のへりに立ち、足を踏ん張った。
「しゃーんなろ!!」
思いっきり針をぶん投げる。
ぽちゃちゃん。
遠く水音がする。
どうよ、これなら池の中央の大きな魚が狙えるでしょ。
フン、と鼻息を荒くした私に遠慮がちな声でナルトが言った。
「……サクラちゃん、やり直しだってばよ」
「何でよ」
不機嫌な顔で振り返る私に、ナルトはポリポリと顔の横をかきながら手を差し出した。
「勢いよく投げ過ぎて餌が外れてるってば」
「……え?」
釣りって難しい。

 

空が遠い。
あの雲、さっきから形を全く変えてない。
女心と秋の空っていうけど、秋の空って変わらないじゃない。
私は長いため息をついた。
横でナルトは寝そべって目を閉じている。でも、眠っていないのはわかった。
「ねぇ」
話しかける。
「んー?」
「さっきより随分長く待ってるんですけど」
「そういうもんなんだってばよ」
「ふーん」

えーと、さっきは何を考えていたんだっけ?
そうよ、今日はのんびりと考えに耽ろうと思っていたのに
お天気が良過ぎるのか、私の頭の中は真っ白になっていた。
あくびがたくさん出る。でも、眠いというわけでもない。

あーあ、私、何してるんだろう。
明日からまた仕事だ。仕事は嫌いではない。どちらかというと好きだ。
でも、五年後も十年後もずっと同じことをやっているような気がする。
未来が見えなくて不安、という言葉はよく聞くが、
私の場合は未来が見え過ぎてて、最近ではそれが少し私を憂鬱な気分にさせていた。

このままでは20年後くらいに突然後悔しそうな予感がする。
もっと違う人生が、仕事や恋があったんじゃないか、って。
日々の仕事に忙殺されて気付いたら年月だけ過ぎてしまっているなんて考えるだけでも恐ろしい。
この仕事が落ち着いたら、
この任務が終わったら、
そう考えていたら、いつまで経っても、その時はこない。

じゃあ、どうする?
動くなら、考えるなら……
「今だ」
「え?」
急に声をかけられ、私は首を回して振り返る。
でも、その先にあったのはナルトの顔で……
「!!?」
唇を掠める生温かい感触。
私は目をぱちぱちと瞬かせると何も言わずに前に向き直る。
そんな私の目の前、ウキがスーッと円を描いていた。

でも、私の頭はそれどころではなかった。
ちょっと待って。
私、今ナルトにキスしなかった?
「あ、手を離しちゃダメだってばよ!!」
言って、ナルトが私の背後から手を伸ばして竿を引っ張る。
「え」
そんなこと言われても。
ビクビクと釣り竿に伝わってくる振動。魚がもがいているのだ。

私はどうしていいのかわからないまま、ただひたすら竿を握った。
ナルトは私が握った少し上と少し下を握り、しっかりと竿を固定させている。
「手は絶対に離さないで。魚が引っ張る力と同じくらいの力で持つんだってばよ」
「う、うん」
返事はしたものの、私の頭の中は恐慌状態だった。

それより何より距離が近いんですけど。近過ぎるんですけど。
ナルトは、私を背後から包むような体勢で竿を掴んでいた。
背中に当たる筋肉質な身体。
自分の心臓が物凄い速さで鼓動しているのがわかる。
顔が、剥き出しの腕が突然熱を帯びたように熱くなったのを感じる。

やだ、心臓の音が聞こえちゃうじゃない。
息が出来ない。
力が抜けてくる。
もう……無理。

竿を掴んでいた手を放して逃げ出そうとしたその時、
竿を引っ張っていた力が弱まったように感じた。
「……え?」
「よし、巻いて引っ張って」
横にいた少年がナルトを見上げた。
「兄ちゃん、網はいるか?」
「ああ、顔を出したらすくってくれってばよ」
「了解!」
そして、男子二人は息を合わせて魚を池から引っ張り上げた。

 

水から引き上げられた魚は想像以上に大きかった。
ビチビチとしばらく跳ねて水の中に逃れようとしていたが、そのうちに大人しくなった。
「わ、大きい……」
こわごわと覗き込む私に、ナルトは得意気に口の端を上げた。
「ほら、力の加減が大事なんだってばよ」
「何よ、偉そうに」

その時、わらわらと別の子供達も群がってきた。
「魚釣れたの?」
「わぁ、大きい!」
「お腹すいた」
「ボクも!」

気付けば、子供たちにじっと見つめられていた。
「……何よ?」
「お姉ちゃん、この魚どうするの?」
「どうするのって……」
ナルトと少年を振り返る。
「焼いてみんなで食べちまおうぜ」
少年が二カッと笑って言うと、子供たちは皆歓声をあげた。

「お姉ちゃん、お魚を料理して!」
一人の子供が笑顔で私を見上げる。
「え、私、こんな大きな魚なんか調理したことないわよ」
戸惑う私に、ナルトが腕まくりをして前に出る。
「オレに貸してみろってばよ」
そして、腰のポーチからクナイを取り出す。

「姉ちゃんってば、兄ちゃんの彼女のくせして何も出来ないんだな」
「え」
「兄ちゃんはすげーんだぞ。強いし、頭いいし、カッコイイし、料理も出来るし、忍術も教えてくれるんだぞ」
「ハハ、褒め過ぎだってばよ。ま、オレは火影になる男だからな。当然だってばよ!」
調子良く答えるナルトを軽く小突く。
「ちょっと、何で否定しないのよ」
「え?否定?ああ、頭いいって所?」
「それもだけど、誰が誰の彼女なのよ」
私が否定するより、ナルトが否定した方が子供たちはよく理解するだろうに。

なのに、ナルトは知らん顔で魚を捌く手を止めずに言った。
「だって、サクラちゃんもさっきは否定しなかったってばよ」
「え」
首を傾げて少しして、あ、と思う。
一番最初に子供に聞かれた時だ。
ナルトは眠ってて聞こえてないと思ったのに狸寝入りだったとは。
「別に……」
何となく否定するほどでもないと思ったからだ。
「うん。別にいいじゃん」
何でもない事のように口にしながら魚と格闘するナルトの横顔を見つめる。
「オレはサクラちゃんが好きだし、彼女だって見られるなら嬉しい。だから否定しない」

私は驚きを通り越して呆れてナルトを眺めた。
随分、堂々と告白してきたものだ。
それもビチビチと跳ねる魚を捌きながら。
辺りは結構な血しぶき。
魚の鱗も飛びまくって、あちこちで日の光を反射して虹色に光っている。

「そうね」
私は不思議と穏やかな気持ちで答えていた。
「私も別にいいわ」

その時、風景が見えるような気がした。
こんな広い野原。
雲一つないようないいお天気。
ナルトに良く似た悪戯な顔をした子供がこちらに向かって手を振る。
それに応えるように手を振る私。
大きなお腹をさすって。
子供は横にいる大人に何かを喋りかける。
その人は釣り竿を手にこちらを振り返る。大きな魚を手にして。

そんな未来もあるかもしれない。

「え?え?えーと?別にいいってどういう意味?」
自分が告白して来たくせに、素っ頓狂な顔をしているナルト。

「だから、別にって言ってるの」
私はそう言うと、ナルトの鼻先に手を伸ばした。
ついていた魚の鱗を弾き飛ばす。

「ちゃんと美味しく料理してくれるなら、彼女でもいいって言ってるの」
ナルトと一緒なら、きっと後悔なんてする暇がないくらいの20年後になってる。

 

ー 終 ー

 

 

ひとこと

久しぶりなナルサクです。
ネタなしです。誰か妄想ください(笑)
何書いても同じに思えてしまって。いや、実際同じか。。。(死)

 

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