わたしのヒカリ(渚カエ)

 

ネタバレです。
アニメ・コミックス派の人は読まないでねん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可愛いなぁ。

授業を受けながら、お菓子の想像をしているフリをして
たまに盗み見る。

男の子のクセに可愛い。
可愛過ぎる。

ちょっとムカつくくらい。

どこがかなぁ?
どこが可愛いのかなぁ。

顔の作り?

うん。
顔のパーツは小さくて整ってて
絶妙なバランスで可愛さをアピールしてる。

でも、
渚が一番可愛いのはその身に纏う雰囲気だ。
そう、オーラってヤツ。

 

ー わたしのヒカリ ー

 


 

私、目がいいんだと思う。
小さい時から周りの家族のことよく観察してた。

だから
どう動けば、どう喋れば
一番いいポジションに自分を置くことが出来るのか
すぐにわかった。

子役ってね、主役より光ってはいけないの。
主役を引き立たせるためにいるから。

でもね
それでいて
鈍くて原石みたいな危なっかしい光を放てないと
駄目な子役だって言われてすぐに捨てられちゃうの。

私は主役にはなれない。

主役は周りのことなんか見てないから。
見てるようで見てないから。

来る者は拒まず。
去る者は追わず。

自らの周りに群れ集う人間のことなんか気にせず、
ただ強烈なヒカリを放ってるのが主役。

 

「渚、帰ろ!」
放課後、私はさも当然のように渚に声をかける。
「うん」
渚はカバンに教科書をしまうと立ち上がって返事した。

僕たち、幼馴染みだっけ?
違うよ。

僕たち、付き合ってた?
ううん。

なんで、お揃いの髪型なの?
だって可愛いじゃない。

そんな質問と答えがあっても不思議じゃない。
でも渚はそんなこと聞いてこない。

聞きたいことがあっても
色々考えて、色々遠慮して
結局聞くことをやめてしまう子だから。

 

並んで歩きながら、またこっそりと渚を眺める。
遠くの雲を眺めながら。
ケーキを想像している子の顔をして。

渚って本当に可愛いなぁ。
細い線。綺麗なライン。
柔らかな空気。オーラ。
でも、眩しいくらいに光ってる。

渚は私のヒカリ。
私の可愛い王子様でお姫様。

可愛いって万能なの。
可愛いって言えば、世の中大抵うまく収まるんだ。

「ね、渚。買い物付き合ってくれない?」
「買い物?」
「うん。駅の前に新しいお店がオープンしたの」
「いいよ」

渚は断らない。
なんのお店かも聞かないで頷く。
別にいいかな、って思ってるから。
だから受け入れてくれる。

 

でも、さすがに躊躇したみたい。
渚はそこで立ち止まると私を振り返った。

「お店って……ここ?」
「可愛いでしょ?」
「可愛い……けど」

目の前にはファンシーな下着。

私はぺろりと舌を出して渚の手を引っ張った。
「なんてね。そっちじゃないよ、こっちだよ」

ピンク色のお店の横の小さな入り口を抜けていく。
中は銀色の世界。
壁いっぱいにつり下げられたシルバーの世界。

「ああ、ここね」
渚はホッとしたように笑った。
渚の笑顔の横では、トングやへら、スライサーにふるいがピカピカに光ってる。

「うん」
私は渚の手を離すと、どんどん奥へと進んでいった。
「これこれ。これが欲しいのよ。ドゥマールのフレキシパン」
「……へぇ。焼き型?」
「うん、そう。でもプロ用の道具は高くって。暗殺に利用したら経費で落ちるかしら?」
「材料なら落ちるだろうけど、道具はどうかなぁ」
「あは、烏間先生次第ね」

ふと、渚が何か言い淀むような気配を感じて、
私は手近にあったハートの焼き型を手に取った。

「茅野はさ、いつもニコニコしてるよね」
「そうかな」
「茅野って、可愛いよね?」
どきり、とする。

私は渚を見た。
渚も私を見ている。
二人、狭い通路の途中で黙って見つめ合う。

渚は真顔。
でも、真顔だけどそういう顔じゃない。

私はもう一度笑みを作った。

「よね? って、どうして疑問系なのよぉ」

渚は、軽く首を傾げて
それから口に指を当てて少し考えるような仕草をして
ゆっくりしてから口を開いた。

「うん。可愛いのにモテるって感じでもないのが不思議だなぁって」

あくまで真顔。
私たちって、女の子同士の友達だったっけ。

私は、うーんと頭に手を置いた。
「この直線体形が原因かなぁ」
やっぱり、ここは自虐ネタしかない。

渚は柔らかく笑った。
「でも、茅野の笑顔は皆を安心させてくれるよ」
「ホント?」
「うん。何て言うか、空気になじむっていうか」
「あは、だって、私、これくらいしか取り得ないし」

なじませてるんだもの。

「それより渚、昨晩のドラマ見た? 私見逃しちゃった」
私は会話を切り替える。

「僕は見てないけど誰かが話してたよ。主人公の前の席の子が自白したって」
「あー、やっぱり! カメラがあの子向いてたから、なんか気になったのよねぇ。で、その子どうなった?」
私がそう尋ねたら、渚は驚いたような顔をした。
「言っちゃっていいの? もう見ないの?」
「うん、見ない」
私はニッコリ答える。
だって、先週のカメラの動きでもう大体予想はついていたから。

「すぐ後に、誰かに殺されとか自殺したとか……」
「嘘ー! じゃあ、やっぱり犯人は別にいるんだー。えー、誰だろう」
私がブツブツ呟いていたら、渚は横で苦笑した。
「茅野って、そういうストーリーも好きなんだね」
「うん。だって、最後がどうなるか気になるもん」

そうよ。
一番大事なのは最後。
最後にヒカリを浴びるのは誰なのかってこと。

そんなのわかってる。
主人公だって最初から決まってる。

 

公園。

もう触手を隠すこともしない。
私は緩やかに殺気を含んだまま、その地球外生物を見つめる。

その周りには、たくさんの目。目。目。
見たこともない化け物をみるような、
信じられないといった目が私を貫く。

渚、知ってる?
脇役が目立つ時ってね、
それ、その子のバッドエンドのフラグなの。

渚は目を見開いて私を見てた。

ああ、本当可愛いなぁ。
食べちゃいたいくらい可愛い。

ねぇ、渚。
私のヒカリ。

大好きだよ。
 
 

ー 終 ー

 

 

ひとこと

カエデちゃん、最初から好きだったんだけど、
だからアンケートでも一票入れてたんだけど、
まさかこんな変貌してくれるとは思ってなかった。

さすがヒロイン!
まさにヒロイン!

だから、無事だよね?
ドキドキしながら本誌展開を見守りまっす。

 

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