お前の全てを奪う(バンエレ)

 

ネタバレ含みます。アニメ派の方はご注意くださいませ。

 

 

 

 

 

 

「バカヤロウ!」

叫んで目が覚める。

小鳥が賑やかにさえずり、水の流れる音が聞こえ、
コケモモの甘い香りを風が運んでくる。

地上の楽園。

 

ー お前の全てを奪う ー

 

 

「……あれぇ……?」

それは見覚えのある風景。
緑深き妖精王の森。

「ん、んー……?」
俺は何でここにいるんだ?

「バン、おはよう」
かけられた声に振り向く。
いや、振り向かなくてもわかってはいたが、振り向かずにはいられなかった。

そこにいたのは、生命の泉を守る聖女。
「エレイン……」

「今日はなんの話を聞かせてくれるの?」
ニコニコと屈託のない笑顔。

「ああ♩」
俺は頷いて、それから下を向いた。
常に手離さなかったラベルコレクションが手の中にあった。

「でよ、ここのエールは春の1週間にしか採れない特別なベリーをさ……」
「うん、なぁに?」
エレインが俺の顔を覗き込む。
「……これ、前にも話したよな」
「え?」
「前にも話したんだよ」
「……バン?」

夢を自在に操れるなら、俺はいつでもエレインに会える。

「でもなぁ」
空を仰ぐ。
「これがさ、俺がエレインに会いたいんじゃ、ねーんだよな♩」
妖精の森の葉は薄い緑。透けるような緑。
その緑が空の青と融けて浅葱色になる。

「……バン?」
小さな口を結び、首を傾げる姿。

森の聖女は幼女で
あどけない表情をしたかと思うと
どきっとするような大人びた表情をして
俺を翻弄する。

俺は妖精の森のもっと上、青い空の真ん中、透明と水色の途切れ目に視点を置いた。

「約束したからな♩
『いつか必ずお前を奪う』ってさ。
あいつをいつまでも待たせるわけにはいかねーだろ♫」

黙って俺を見つめる静かな目。

「だから、俺が夢に逃げ込むわけには、いかねーんだよっ!!」

言って、拳を叩き付ける。
幻想の女に。

次の瞬間、風景も聖女も白い霧と消えていった。

「……なんてな……」

夢でも何でも
お前の声が聞ければ、本当は俺は……

 

 

ガスッ!
クッションの上で怠惰に昼寝している所を一撃で落とす。

ゴスゴスゴス……
つぶれた背中を長い足でグリグリと蹴り付ける。

「い……痛っ!何すんだよ、バン!!オイラ何もしてないだろ」
赤い顔をして顔を上げるキング。その童顔に顔を寄せて凄んだ。
「けっ、悪趣味な夢、見せるんじゃねーよ」
その途端、キングは口を尖らせると首を横に向けた。
当たり。
人智を超えた妖精王にしちゃあ、随分と幼稚くさい。

「あいつは700年間もたった一人で妖精の森を守ってたんだぞ」
「……」
「あんなノーテンキな笑顔見せるかっての。
それともアレか?お前が森を守ってた時はあーいう笑顔だったのかよ」
俺の台詞にキングは目を見開き、それから俯いた。

返事が無いのが何よりの返事。
そうか、こいつが森を守ってた時には、
エレインは聖女じゃなくて本当の幼女だったんだな。

俺は噴き出した。
「ホント、似てねー兄妹だな」
「……え?」
「泣き虫で素直じゃなくて虚勢ばかり張る兄だって言ってたぞ」
首をコキリと鳴らしてそう言ったら、キングは赤い顔をしてこちらに向き直った。
「素直じゃなくて虚勢張るのはエレインの方だと思うんだけど!」
「ははっ♫……まー、確かにな♩」

「七つの大罪」として一緒に活動している時、よくキングは俺の後ろにいた。
俺のやることなすこと、いちいち文句をつけてくる。
小うるさくて、うざいヤツで「殺すぞ、クソデブ」と何度ののしったことか。

あの時、こいつがエレインの兄だと知っていたら……?

『妖精王、お前を連れ戻して、エレインは俺が奪う♫』

でも妖精の森も、生命の泉もない。エレインもいない。
生命の泉は俺の身体の中。

ふわり。
クッションが宙に浮く。

「君と妹の話が出来るなんて考えたこともなかった」
「……フン、話したくもねーな」
マジ、話したくもない。
「でも妹は死んで、二度と会えないんだ。だから君ももう……」
キングはうなだれて言いにくそうに言葉を紡ぐ。

「オイオイ、慰めの言葉かよ。冗談じゃねぇな♩」
俺はぺろりと舌を横に出すと口の端を舐めてみせた。
「二度と会えないって?んなわけねぇよ♩死者の都でも会っただろ?」

化石化の術を一瞬で解いた妖精の力。
唇に触れた柔らかな感触。
でも、まるで熱量のないそれは、樹木か花のようだった。

あの時のあいつは
確かに温かくて柔らかくて
俺の頬を優しく撫でた。

「俺は不死身で、あいつは死んでて」

死者の都での一瞬の邂逅で改めて知る。
俺が生きている限り、あいつが死んでる限り、俺達は共にいることは出来ない。

じゃあ、手は一つだ。

「俺はあいつの全てを奪う」

そう、あいつの死すら奪ってやる。

静かに目を閉じた俺に届いたキングの声。
「バン、ありがとう……」

冗談じゃねー
マジ冗談じゃねーけど
エレインの声とやっぱり少し似ていた。

 

「マジ殺すぞ、クソデブ♫」

 

ー 終 ー

 

 

ひとこと

あれ?
バンエレじゃなくて、バンキン(板金?!)になっちゃった?
いやいや、そういうのは私二次ではやらないので(笑)

バンの口調がまだ馴染んでなくてスミマセンー。
台詞の後ろにいつも音符があるのがいーよね♩

ところで、エレインはオバサン化しないのですか?
ええ、しませんとも!女の子ですからっ!!
どうしてもって言うんなら、オバアチャン化してください。
それは可愛いかもしれない。

 

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